Les Yeux Ouverts

〜TとYの冒険譚〜 (サタンのタンゴ 〜くらいよに どこからともなく きこえてくるよ〜 改め)

夕日がしずむ

地元でゆっくりしたい日曜日などを使って、月に1、2度くらいは、ベルヴィルの中華マーケットへと買い出しに行く。というサイクルができてきた。和、中、韓をアレンジした日々の料理を楽しむには、醤油、ごま油、紹興酒、コチュジャン、パン粉、ニラ、えのき、豆腐、麺類、などなど、必需品が多数。そういったものを調達しに出かけるのである。家のすぐ隣のビオスーパーでも揃うものはあるけれど、いかんせん高価すぎて、野菜やお米以外のものにはなかなか手が出ない。こういうものはじゃんじゃん使わねばならないので、迷わず中華街へ。20分はかかる道のりを、歩いて向かう。
その時に必ず通るのが、丘を見下ろす小道。視界のひらける場所に通りがかると、それはちょうど日没の瞬間だった。何層にも重なった雲の切れ目が地平線のわずか上にあって、夕焼けが複雑な色と模様を描く。赤く透明な光、ピントの合わないぼやけた空、反射で赤くなった雲、影だけになったエッフェル塔。散歩中の人たちがみなそこで立ち止まり、しばしたたずみ、写真など撮っては、喜びの声をあげている。あまりの光景に笑い出してしまう人もいる。そのそばで、何やら叫んでいる人がいても、誰も気にしない。しずみゆく赤い太陽、絶叫する男、嗚呼『インディア・ソング』。