Les Yeux Ouverts

〜TとYの冒険譚〜 (サタンのタンゴ 〜くらいよに どこからともなく きこえてくるよ〜 改め)

Les deux meilleurs films

年の瀬なので、映画のことも少々。旧作だけれど、今年の1本を選ぶのはとっても簡単。今年はデュラスの『インディア・ソング』をおいて他になかったから。1年の予定が全然変わってしまうくらいの影響力だった。来年もまたひき続き。
次点も、同じくデュラスの『ナタリー・グランジェ』。デュラスの持っていたノーフル・ル・シャトーの庭付きの家で撮られた白黒映画。あの寒々しい感じ。調律のずれたピアノの音。少ない台詞。学校の先生によって語られる、小さな少女のぼうりょく。小舟に乗れる池と、落ち葉のたまった庭。ぱちぱちと燃える小枝。無気力な、黒髪の女。ジャンヌ・モロー。
映画の中では、ノーフルの家のあちこちに、植物が置かれていた。庭から切ってきたものなのか、部屋とよく調和していた。うちには庭がなかったから公園に行き、落ちた枝や葉からきれいなものを拾い集めて、あの家を思いながら部屋に飾ったりした。あんなふうに、大きく四角いタイルのしかれたキッチンがあって、植物に囲まれた、古びた家に住んでみたいと、強く思った。
その何ヶ月か後、幸運にも、そんな思いを部分的にかなえてくれるような家に出会えたのだった。公園で拾って水にいけたツタの切れ端は、新しい家のキッチンで今もゆっくりと成長を続けている。