Les Yeux Ouverts

〜TとYの冒険譚〜 (サタンのタンゴ 〜くらいよに どこからともなく きこえてくるよ〜 改め)

2大美術館対決

妹の絵は見られなかったからそのかわりに、と言うにはずいぶん贅沢だけれど、「レンブラントとキリストの表現」展を見にルーヴル美術館へ。ルーヴルの地下にある、特別展示室での企画展は、毎度毎度いい具合に力が入っているだけでなく、研究の成果をさらりと見せることに長けていて、優れた短めの論考を読んで、ふむふむと楽しめる感覚がある。しかもそれを展覧会の形で示せるというのは、さすがだなと思う。構成、配置、解説、どれもほどほどの量にまとまっていて、とてもうまい。今回は、普段もルーヴルにあるレンブラントの油絵「Les Pèlerins d'Emmaüs(エマウスの巡礼)」を中心に、その前後に描かれたと思われる習作や、同時代に描かれたキリストの肖像が集められ、比較しながらみることができた。ユダヤ教徒との交流、肖像画制作を経て、レンブラントが描くキリストの表象が変化していったという、その流れに乗って絵を見ていくと、その論に多少の無理があるような気がしないでもない、と思わせる余地があることも含め、とても面白かった。
少し前には、オルセーで「Manet, inventeur du Moderne」展を観たのだけれど、こちらはルーヴルと比べてしまうとだいぶ面白味に欠ける展示であった。オルセーに元々あるマネの作品以上にみるべきものはほとんどないと言ってよく、ボードレールの専門家か誰かがありがちなテーマでひとつところにまとめた印象。それならいつだって出来る内容だし、広くはない空間にぎゅぎゅっとつめて並べられると、目の前にあるマネではなくて、もっと前の時代のゴヤこそがいかに偉大なinventeurであったかということに思いを馳せたくなったほど、マネの絵に退屈してしまったのだった。