Les Yeux Ouverts

〜TとYの冒険譚〜 (サタンのタンゴ 〜くらいよに どこからともなく きこえてくるよ〜 改め)

ボーブールに日が暮れる

ジャ・ジャンクーの新作『I wish I knew』を観る。『四川のうた』のスタイルを踏襲し、18人が語り手として登場する、上海にはじまる中国全土のイストワール。白くもやのかかった映像の中に、きりりとした現代的な表情をみせながらも、ラブストーリーのような柔らかさがふわりと流れる。青春映画の切なさもある。でもどんな瞬間も、大げさにならず、甘くもなりすぎず、そのバランスが見事。語り口の、映像の、音楽の、編集の、全ての選択の美しさが、じわじわじわと染み入ってくる。世界的にみて、今一番力を発揮している映画監督がこの人であることを、多くのフランス人は知っている。映画館は老若男女でほぼ満員。退席者なし。保証済みの傑作は、期待を越えてスクリーンの上に。