Les Yeux Ouverts

〜TとYの冒険譚〜 (サタンのタンゴ 〜くらいよに どこからともなく きこえてくるよ〜 改め)

西の森へ

よく晴れた日曜日の昼下がり、気温も上昇。パリの西の廃墟と、そのまた西の森を歩く。

デュラスが『インディア・ソング』の中で、カルカッタにあるフランス大使館と見立てその外観を撮影した、ロスチャイルドの城。第二次大戦中はドイツ軍に占拠され、1974年の撮影時すでに廃墟と化していた。薄暗い光の中で撮られたその映像は、一見しただけでは建物が荒廃していることに気づけない。(同じフランス大使館として別の館も撮影され、さらなる錯覚を起こさせる。一本の映画の中のデュラスの試み全てに、何度見ても驚嘆するばかりの鑑賞者。)『インディア・ソング』と同一のサウンドトラックを使ったもう1つの映画『ヴェネツィア時代の彼女の名前』では、この建物の映像が全編で使われており、そこではまぎれもない廃墟として外観や内部が写されている。

その後も放置され続け、今や落書きだらけで、窓と扉は全てコンクリートブロックで塞がれている。敷地内に入るには、フェンスを1枚越える必要があった。

そこから森を歩き、

(右から左へ)川を越え、

(右から左へ)線路も越えて、

広大な庭園へ。

この恵まれた環境は、

裕福層が独占。西と東。天上と現実。

すこしはなれた公園のかたすみでは、産業博覧会全盛の時代に建物を飾った、技術と産業に冠を掲げる女神の石像が、不吉に影を落としていた。